私の情報管理では相変わらずCapacitiesが大活躍している。
しかし全ての情報をCapacitiesで扱えているわけではない。そもそもCapacitiesの開発チームもオールインワンを目指してはいない。
Capacitiesは情報をオブジェクトとして扱うのが売りだ。というか、そもそも自分の中でオブジェクトであるものを、素直にそのように扱えるというのが特徴である。このことにより、オブジェクトっぽいものとオブジェクトではないが個別に扱った方が良さそうな記述などが混在したカオスから解放され、手元にある情報は随分クリアになった。
しかし逆に、元々オブジェクトでないものはCapacitiesを使ったからといってすっきり解決はしない。Capacitiesはオブジェクトという仕組みの他は昨今一般的なネットワーク型ノートツールと同様の機能なので、別に混乱が増すわけでは無いが、鮮やかに道が拓ける感じではない。
オブジェクトではない、つまりページを分けるほどの存在感はない、且つ個別の断片として扱いたい。そのような情報(例えばアイデアや何かに対する見解)の居場所というのがなかなか難しい。
個別の断片として扱うと同時に、それが育つことも期待しているので、そうなると例えば付箋ツールのようなものだとちょっとやりにくい。断片を扱うイメージとしてはよいのだが、たくさん書けるようになっていないし、書けたとしてそれをどうするかが難しい。
アウトライナーは記述を育てやすいが、位置が固定的にならざるを得ないのが難点だ。この固定的というのは動かしにくいということではない。上から下までのどこかに、根拠はなくとも必ず位置づけなくてはならないという意味である。また、個別の断片という感覚が薄いのも微妙なところだ。いや、むしろ全てが断片なのだが、ほとんど無個性な行として境界もなくずらっと並んでいる状態だと「個別」のものには感じにくい。もちろん工夫はいくらでもしようがあるが、工夫をするという気合が要る。
しばらく考えていて、付箋とアウトライナーのある種あいだの存在としてマインドマップ型ツールはどうだろうかと思い至った。マインドマップ本来の使い方を考えるとやや邪道な感があるが、ひとまず「付箋とアウトライナーの中間っぽい形態」という点にだけ注目する。
マインドマップ型ツールには配置の種類を選べるものがある。例えばこのような形。(画像は「Blumind」というWindows用フリーウェア。→Vector 新着ソフトレビュー 「Blumind」 - トップダウン型のアイデア整理やメモに最適なマインドマップ作成ソフト)
こうすると、配置も操作感もほぼアウトライナーである。しかし断片ひとつひとつが枠で囲ってあることで個別っぽさがあるし、更にこの構造とは関係なくリンクをぐいと引っ張って繋げることができる。アウトライナー風であると同時にネットワーク型ということになる。
ノードそれぞれにメモを付けられるアプリケーションだとより便利だ。考えが育った時に、ノードを増やすのではなくメモ欄に文章として書いてしまえば良い。普段は表示されないから全体の見通しも邪魔しない。(もちろん広がる方向に発想が膨らんだらその都度ノードは増やしていく。)
色々なことを一気に解決してくれそうな気がするが、しかしひとつ残っている難題が「位置づけなくてはならない」問題だ。Blumindではノードは必ずどこかに繋がっている必要がある。アプリケーションによっては付箋ツールのように単独で浮いた状態にできるが、それでも何かしらの基準で平面上のどこかの位置は選ぶ必要があり、必然性のなさに少しもやもやすることはある。位置づけから自由なネットワーク型ノートツールでは考えなくてよいことと向き合う必要がある。
このことについては「解決」はしていない(しようがない)が、このもやもやはエネルギーにもなり得る。あらゆる思考や思いつきは、発生時点で何とも結びつけられそうになかったとしても、完全に単独で存在しているということは多分ありえない。それが生まれた経緯や動機というものがあるはずで、自分の中にどういう思いがあることでそこに至ったのかを考える余地がある。それが見つかればその下に思考や思いつきをくっつけることができる。
客観的な分類ではなく自分の思いを突き詰める方向で上位ノードを考えていけばだんだんと集約される方向に向かうだろう。もちろん全てを一点に繋げる必要はなく、自分の中で分けて考えた方がいいものは違うマップにするなどして分けて考えれば良い。いずれにしろ、位置づけに納得したいという気持ちを燃料にして整理を進めるというのは位置づけなくていいツールでは生まれない流れであり、それを積極的に利用するのはひとつの手だ。
縦に並んでいくアウトライナーと、付箋ツールやマインドマップなどの平面配置のツールとでは、ひとつ大きな違いがある。アウトライナーは基本的に縦一列でしか表示できない都合上、一度に視界に入れられる情報量には限りがある。その一方で平面配置のツールは縦横に広げられるので、PCを使うならかなりの情報量が画面に収まる。どこに位置づけるにしてもそれらが全部視界に入った状態にしておける。「あれはこっちと繋がるんじゃないか」的なひらめきも生まれやすい。今更にも程がある話だが、最近はマインドマップ型ツールからも付箋型ツールからも離れていたので、このパワーについて真剣に見直す必要が自分の中にはあった。(世のノートツールの展開を見ると、平面配置のビューの採用はメジャーになりつつあるような気がする。)
で、かつてマインドマップ単体で考えていた時には結局何をどこまでマインドマップ型ツールで扱うべきかがわからなかったので、余計なことをしてかえって複雑化するなどしてツールの力を活かせなかったのだが、今「Capacitiesでやりにくいことを補う」という前提でマインドマップを見ると、マインドマップが真に威力を発揮するポイントに絞って使えるのではないかという感じがしている。
自分が「あれ」と指させるものはCapacities、そのように形を成していないもやもやしたものはマインドマップ、というふうに役割分担することで、相互にノイズがなくなり思考に適切に集中できるかもしれない。
ちなみに、今回紹介したBlumindはファイルの中身がxmlで、いざとなればデータを好きに加工して再利用できるなと思ったので安心して採用している。