前回(ライフ・アウトライン日記: あり得る未来を考える領域の追加)、ライフ・アウトラインを改造した結果「LIFE-○○」の領域が二つから四つに増えたので「DO」と「LIFE」で括ることにしたい、という話を最後にした。
それぞれを括るにあたり、全部を包括する一段階上位の概念がないだろうか、ということを考えた。それが元々は「ライフ・アウトライン」なのだが、「LIFE-○○」の四つを括ったものを「ライフ・アウトライン」と呼び替え、上位概念を改めて考えてみることにした。
まず本来の「ライフ・アウトライン」の肝心なところは何だったか。自分の中にある思いや自分を取り巻く環境を俯瞰して、自分の人生・生活を自分以外の何かに支配されることなく、自分で手綱を握って日々の行動を選択していく、それをアウトラインというものを使って具体的に試みていくというところだろう。
つまり「生きる中での選択の候補と選択する根拠」を総合して扱う場と言っていいと思う。このことをまず前提として押さえておく。
生きていく中で自分の言動や進む道を選択する時、その選択の根拠となるのは何か。まず「自分はどこにいて、どうしたいのか」ということがある。それが「LIFE-○○」で扱っていることだ。しかし根拠となるのはそれだけではないように思う。
ほかに重要なのは「人間はどういうもので、どうであるべきと自分が認識しているか」ということだ。これは「LIFE-BE」や「LIFE-AS」の中に含めて考えることももちろんあり得る(Tak.さんはそのようにしていらっしゃるということだと思う)が、私は自分の価値観以外のものも併せて扱いたいので、領域を分けて考えている。
更に、「そもそも自分が世界について何を知っているか」も選択に影響を与える。自分がどういう価値観を持っているかは重要だが、それ以前に知らないことは選べないし、知らないところに道を見出すことはできない。
ということで、自分の選択の根拠となる情報にはこの三種類があるというふうに整理し、そして「現状自分にどんな責任があり、どんな選択肢を自分が想定し実践しているか」、つまり本来の「ライフ・アウトライン」で言うところの「DO-○○」の領域を加えた四つの領域を、自分の人生に直接関わりうる情報の置き場所として考えたいと思う。
これらについてこのように名前をつけて整理した。
タイム・アウトライン
実際にやることを考え、整理し、実行に繋げる
「ライフ・アウトライン」の「DO-ALL」および「DO-DAYS」
ライフ・アウトライン
自分はどこにいて、どうしたいのかを整理する
「ライフ・アウトライン」の「LIFE-BE」「LIFE-AS」および自分で追加した「LIFE-IS」「LIFE-MAY」
フィロソフィー・アウトライン
人間はどういうもので、どうであるべきと自分が認識しているかを整理する
哲学、社会学、心理学、人生訓、自分の持論等
グローバル・アウトライン
世界について自分が何を知っているかを整理する
哲学以外の領域
そしてこれらを総称して「四つのエッセンシャル・アウトライン」と呼ぶことにした。生きる上での根本を支える重要な領域ということで「エッセンシャル」とした。Dynalistにはこのようにファイルを作ってある。
アウトラインと呼んでいるが、必ずしも「アウトライナーで扱うもの」を意味しているわけではない。例えばSoulLinkMapというツールでは、階層構造を扱いつつも、ひとつの項目が親を複数持てるようになっているのだが、それは普通アウトライナーにはない機能である。しかし親を複数持つ状態もアウトラインに含めたいと私は思っているし、そうなると現状の一般的なアウトライナーではその状態を表現できない(もしくは自然な形になっていない)ので、アウトラインのイメージを持ちつつも別の種類のツールを使うということになる。
現状、DynalistとCapacitiesの二つを使っている。データの構造としてはSoulLinkMapが非常に面白いのだが(実際先日まで使っていたのだが)、ツールが三つになると統合して扱っている感が薄くなり情報の行き来も難しいので、「フィロソフィー・アウトライン」と「グローバル・アウトライン」という概念を作ったのを機に、DynalistとCapacitiesの二拠点でやる形に変更した。そう考えるまでは、「読書メモ」とか「知識」とか「考え」とかいう括り方によって、そういう「知」っぽいものを扱う場としてSoulLinkMapが良さそうだと思っていた。
四つのアウトラインそれぞれについてもう少し詳しく書いていく。
タイム・アウトライン
タイム・アウトラインは「ライフ・アウトライン」の「DO-DAYS」「DO-ALL」とほぼイコールである。
「○○・アウトライン」の「○○」の部分に何を入れるかは少し考えたが、つまるところ自分の時間に何をどの順番で入れ込むかの話だなと思い、「タイム」にした。英語的には「タイムライン・アウトライン」の方がいいかもと思いつつ、自分が分かればいいのと「ライフ」との音の相性で「タイム・アウトライン」とした。
「LIFE-○○」と分けたことにより、一緒に括られる要素が「DO-DAYS」「DO-ALL」の二つになった。そうなると他にも何か位置づけられるものがあるかも?と考えたくなる。ちょっと考えてみた結果、所謂「手帳の付録」的な情報をタイム・アウトラインの一要素としてもいいかもしれないと思った。何かをする時に必要な情報の類だが、具体的なプロジェクトと対応するものではなく様々な機会で参照する可能性のある情報は、特定のDOの下位に置くのは不便なので別に欄を作るのが良さそうだ。
使用ツールは、「DO-DAYS」「DO-ALL」の部分についてはCapacities。「DO-DAYS」はDaily Notesオブジェクトで、Projectオブジェクトその他のいくつかのオブジェクトタイプやまとめページが「DO-ALL」の役割を担っている。
手帳の付録要素はオブジェクト感がないので、CapacitiesではなくDynalistに場所を作った。「Time」というファイルの中に収まっているわけだが、こういう情報は要は「時短」になるということなので、時短情報であるという意識を持つと「Time」というファイル名に納得できる感じがする。
ライフ・アウトライン
ライフ・アウトラインは元のメソッドの意味から少し範囲を狭め、「LIFE-BE」「LIFE-AS」および「LIFE-IS(自分のライフを制限するもの)」「LIFE-MAY(自分のライフにあり得る可能性)」の四つを総称している。
元々ある語の意味を変えてでもライフ・アウトラインという呼称を使っているのは、後述するフィロソフィー・アウトラインとグローバル・アウトラインで扱う広さに対して、あくまで自分ひとり分のライフであるという意味を持たせたいからである。一方で自分と繋がる周辺をも含んだ領域なので、「自分の」「個人の」という意味を持たせると違和感が生じるため「セルフ」などの語は採用しなかった。
使用ツールはDynalist。「Life」ファイルの直下に以下のように四つのノードを作り、その中に書き込んでいる。
フィロソフィー・アウトライン
フィロソフィー・アウトラインは「人間とは」や「人間としてどうあるべきか」を考える場所である。「自分」と「人間」との接点というイメージ。
使用ツールはDynalist。直下にまず「自分」というノードがあり、続けて哲学者や著名人の名前のノードを置いている。自分はどう思っているのかということと、他の人間はどう思っているのか、学問的にどう論じられているのかということを一ヶ所にまとめて並置し、人間に対する理解と信念を深めていく場とした。
自分の考えと合致しようがしまいが関係なく、哲学を学んだり人生訓を読んだりした時にはここに書き留めていくつもりで、その意味で「LIFE-BE」や「LIFE-AS」の中に含めるのは適当でないように思ったのでこの領域を別に作った。
去年私は、世の中などに対する自分の思いや考えを言葉にした短文を「豆エッセイ」と名付け、それを一体どこで扱ったらいいかということをずっと考えていたのだが、このフィロソフィー・アウトラインの「自分」のノードの下位に居場所を得た。
グローバル・アウトライン
グローバル・アウトラインは世界の森羅万象について自分が出合ったものを書き留めていく場所である。こちらは「自分」と「世界」の接点のイメージ。といっても単純に事実の類を書くというだけで、特別なことはない。
ちなみに最初は「ウィズダム・アウトライン」と名付けていたが、そこまで「知」を前面に出す必要はない感じがしたので「グローバル」に変えた。他に「ワールド」や「ユニバーサル」も候補にあった。
ひとつ注意するとすれば、これは「自分が出合ったもののメモ」に過ぎないということだ。ここに知のすべてを作り上げようなんてことは考えてはいけないし、知そのものについては本があるなら本を開けばいいのである。自分が出合い、調べようと思ったことを書いていくことで、自分が生活の中で世界をどう知ったかをわかるようにするのがこのアウトラインの目的だ。もちろん深く勉強したいとなれば勉強すればよく、その際にはこの領域を使う。
アウトラインと呼んではいるが、アウトライナーを用いることにはあまり利点がない。頭の中では物事を階層的な分類で認識している面もあるのでそれを忠実に再現できたら嬉しくはあるが、その通りに階層をデータとして作ってしまうとむやみに深くなって認識しづらくなるし、物事同士は複雑にリンクし合うものなので、ツールとしてはネットワーク型の方が相応しいだろう。
上の方でSoulLinkMapに触れたが、情報の構造としてはSoulLinkMapのやり方が自然に思える。アウトラインであると同時にネットワークで、形式的な深い階層と実用的な浅い階層を同時に作ることもできるので、一般的なアウトライナーの欠点は解消されている。モダンなアプリケーションではないので積極的に人に勧められるわけではないのだが、「本当はああいう感じがいいんだよな」というイメージを表現するのに都合が良い存在なので取り上げた。
現在の使用ツールはDynalistとCapacitiesの二つで、語彙・語学の類はDynalist、それ以外はCapacitiesで扱う。知識は基本的にはオブジェクトとして認識できるものが多いが、ことばについてはオブジェクトとは解釈しづらくCapacitiesで扱うメリットがなかったのでDynalistにした。なお手書きのノートもある。
なお、去年までCapacitiesの致命的な弱点だった「日本語での全文検索が機能しない」という問題が先月ほぼ解消したので、その点である程度安心してCapacitiesに任せられるようになったということがある。(「ほぼ」とか「ある程度」とか言っているのは、検索機能自体がまだ不完全な印象があり、挙動が怪しかったり検索の使用感として他のツールに劣る部分があったりするため。)
ふくろ
Dynalistには四つのアウトラインに加えて「ふくろ」という領域を設けている。これはTak.さんが仰るところの「未使用」のことで、「ふくろ」というファイルを作っているほか、各アウトラインの中にも「【ふくろ】」というノードがあちこちにある。
命名の由来は以前にも書いたが、ドラゴンクエストシリーズの「ふくろ」である。要は今採用していないものが全部入っている容れ物ということ。「未使用」というと「まだ使っていないが、これから使う可能性がある」という雰囲気を纏うが、どう考えてももう使わないものも一緒に入れたかったので、「ふくろ」に呼び替えている。
Dynalistはファイルをアーカイブ設定にすることができ、そうするとその中身は全体検索に引っ掛からない(ファイル内で検索することは可能)。なので、「ふくろ」ファイルはアーカイブ設定にして、検索に現れて欲しくないタイプの記述を収納している。アウトラインのバックアップの類も「ふくろ」に入れ、同じ内容が二重三重に引っかかって混乱することを避けている。
四つのエリア
以上の四つのエッセンシャル・アウトラインとふくろを「Essential」というフォルダに入れているが、日常で発生・収集する全ての情報がこの中に収まったわけではない。
このフォルダに入っているのは、最初の方で書いたように「自分の人生(の選択)に直接関わりうる情報」である。そうではない情報も様々ある。もちろん自分で集めたり作ったりしている以上すべてが自分に関わっているものではあるが、なくても大勢に影響はない情報というのはある。
ということで、Dynalist上で扱うものを以下の四つのエリアとしてフォルダ分けした。
Essential
- 四つのエッセンシャル・アウトライン
Collection
- ブックマーク、画像、その他収集物
Output
- 自分の創作物(文章など)
Miscellaneous
- Dynalistの使い方などメタなメモ、どこにも当てはまらない種の情報
それぞれ三つから五つ程度のファイルが入っている。
ちなみに「Output」は「自分が作り出している領域だぞ」という意味を込めての命名である。「Creation」とか「Writing」とか「Publishing」とかもあり得るが、それらの語だと例えば「Creationについてのノート」とかもそこに入るような感じがしてきてしまうので、自分の中でその種のものを含まないネーミングとして「Output」を選択している。
このように整理したことで、未だ嘗てなくDynalistの使用感に納得がいくようになった。
このサイトでは実践上発生した思いを踏まえてボトムアップで考えて記述してきたが、結局どんな様子かを俯瞰するには向かないので、noteの方に改めて整頓して書いた。
- 四つのエッセンシャル・アウトラインで人生を俯瞰する|のらてつ