前にScrapboxについて書いた際、ページ(またはリンク)にはタグ・キーワード・記事の三種類があるということを語りました。
それから十ヶ月ほど経ちましたが、やはり自分の中ではそのように分けられるという実感が続いています。(ただし、言葉の雰囲気を統一するためにこの記事では「記事」を「ノート」に言い換えることにします。)
咀嚼し直すと、Scrapboxの管理というのはつまり、情報を持つ「ノート」を、「タグ」によって適宜カテゴライズし、意味内容の共通項である「キーワード」を繋ぎ合わせることで、自分が集めた情報を有機的に整理していくことである、と捉えて私はScrapboxを使っています。そしてScrapboxはそれらにシステム上の区別がない、ということが他のツールとの大きな違いになっています。
「タグ」と「キーワード」は、ネットワークの「線」の部分であると言えるかも知れません。それそのものは実体をあまり持たず(持つこともあり得る)、情報を繋いだり集めたりすることがそれらの仕事です。
例えばScrapboxに関するページがいくつかあったとして、それらが直接的にリンクされるとは限りません。他のツールとの使い分けの話とUserCSSに使えるコードの話とでは繋がりは強くありません。しかしどちらのページにも「大雑把に言ってScrapboxに関することである」というくらいの繋がりを持たせたいということはあるでしょう。そういうときは、多くは「Scrapbox」というワードで繋がりが作られることになると思います。(人によっては、内容にこのくらいの距離があったらもうリンクさせることはないということも勿論あると思います。ひとつの例として捉えてください。)
Scrapboxは検索がしやすいので、わざわざリンクをさせなくとも「Scrapbox」で検索すればいい、という考えもあるかもしれません。ただ、日誌をScrapbox内に置いている場合はそれがうまく働かない可能性があります。つまり、「今日はScrapboxを整理した。」みたいな記述が引っかかるかもしれないし、ブックマークとして貼っておいたURLの中にscrapboxが含まれていたらそれも引っかかります。ノイズが多いのです。種種雑多な情報を集めているプロジェクトでは、能動的にカテゴライズしたほうが情報にアクセスしやすくなるでしょう。
ということで、タグとしてのワードを用いて「ノート」となるページをカテゴライズしてスッキリサッパリ!めでたしめでたし!――とは、残念ながらなりませんでした。もう少し話が続きます。
(ここからは、個々人の頭の中で何が起きるかによって感じ方が異なると思うので共感を覚えない方もいるかと思います。)
例えば、
Scrapboxで日報を作る
日報ページを作り、月ごとのページに一ヶ月分のリンクを貼る?
関連ページがアルバムになるか
[読書メモ]などにも日付タグを貼れば一覧できる
#Scrapbox
というようなライフハック的なメモページと、
noteのネタを管理する方法
ネタには「結果的にこうなってほしい」と「文章として成立させる材料」とが混在する
自分の問題意識の管理と、具体的に文にするための素材の管理
[Scrapbox]は上下のない横断的なリンクでの管理=問題意識の可視化に適している
[Dynalist]は上から下への一方向的な管理=具体的な文章化に適している
というような思索のページとが、同じように出現してくることが果たして良いことだろうか? という問題です。
何がこの問題を引き起こしているのかというと、ページを繋ぐ概念として「タグ」と「キーワード」の二種類があるという点です。カテゴライズするものと、意味内容の関連を示すものとは、役目は似ていますが性質が違っています。
「Scrapbox」というワードを例に用いると、「Scrapboxに関することである」のニュアンス(=タグ)と「ズバリScrapboxというツールの存在に言及するものである」のニュアンス(=キーワード)とではかなりの距離を感じます。「Scrapbox」に向かう矢印の種類と強さが全く違う、と言ったらよいでしょうか。この違いによって、「Scrapbox」という繋がりにノイズが生じています。
このとき、既に自分の中で線引きがはっきりしているような領域ならば、タグの方を「Scrapboxの活用法」などというふうにより具体的なフレーズにして分けることが可能でしょう。しかしながら、切り分けは必ずしも明確ではなく、微妙にフレーズのニュアンスから外れるものに対しては別のフレーズを当てはめたくなり、無闇にタグが増える可能性があります。
もしも分けたい理由が「タグ=カテゴライズ」と「キーワード=共通項」との違いに起因するものであるならば、それはシンプルに「これはタグ」「これはキーワード」とたった二つに分ければ済むのではないか、と考えました。
具体的にどうするか。私は「頭に記号をつける」ということで解決しました。何の記号をつければ気分が良いかはそれぞれの好みによると思うので、こうすべしと言えるものではありません。何かの括弧で挟むという手もあるでしょう。ただ、私個人の感覚としては、「タグである」ということを殊更目立たせたいわけではないので、以下の形にしています。
[#Scrapbox]
つまり、「#Scrapbox」という名前のリンクです。これをハッシュタグとして貼るならば、「##Scrapbox」と打つことになります。
ハッシュタグと重複する記号を敢えて採用したのは、意味を持たせる記号を増やしたくないこと、「#」がタグの意味を持つというイメージに既に馴染んでいること、といった理由からです。
こうすることによって、「Scrapboxの○○」のように新たな意味付けを加えてニュアンスのズレを引き起こすことなく、「カテゴライズ」としての役割と「共通項」としての役割とを分けることができました。
「これは果たしてScrapboxの思想に沿っているやり方なのか?」という疑問は生じるかもしれません。ただ個人的には、むしろScrapboxの思想に沿うために(=キーワードによるリンクを有効に働かせるために)、「Scrapbox的ではないが、しかし自分には必要なカテゴライズ」を「Scrapbox的なキーワードリンク」から切り分けることが必要だったので、これによってScrapboxは随分と風通しが良い環境になりました。
結論を言えば「頭に#をつけるといいぞ」というだけの話ではあるのですが、なぜそれに意味があるのかを示すために回り道をしてしまいました。
今回は以上です。