最近Ankiを積極的に活用している。
Ankiとは、自分で用意した問いに答えると自動的に分散学習のスケジュールに沿ってタイミングよく復習させてくれるデジタル暗記カードアプリのことで、知っている人も多いと思うので説明はここでは省略する。
今は「Ankiってやっぱすげーな!」と思いながらカチカチクリックしたりぺたぺたタップしたりして楽しんでいるのだが、これまでに二度か三度挫折して、しばらくの間使わないでいた。
これほど便利なツールなのにどうして続けられないのか、と自分にイライラしていたこともあったが、挫折の理由は単純なことで、解決も単純なことだったので、メモとして書いておこうと思う。
普通に何も問題なくAnkiを使い続けている人にはあまり意味のない話だと思うので、そういう人は他の記事を読みに行くなどしてほしい。
予め書いておくと、Ankiというツールに落ち度は全くない。Ankiに何かを求めたいものではないし、これはツール論以前の、「勉強とは何か」というレベルの話である。
さて、「続けられない」とはどういうことか。それは何らかの理由によって「なんかやりたくないなあ」と感じること、と言い換えられるだろう。
ツールによっては「起動が遅い」とか「UIがダサい」とかいう、機能の本質とは離れたところで気分を害されることもありうる。しかしAnkiに関してはそういった問題はない(人によっては感じるかもしれないが、私には特に何の障害にもなっていない)。
では何が問題かというと、それは単純な話で、カードを繰っても繰っても「パッとわからない」が続いたからである。いや、繰っても繰ってもというほどのことではなくて、5枚程度続くと既になんとなく気分が悪くなり、10枚20枚とかになるともはやうんざりした気持ちになる。
どうして「わからない」が続くのかといえば、それはまだ「覚えていない」からである。ではどうして「覚えていない」のか。それは「覚えるほど勉強していない」から。当たり前である。よって、「覚えるほど勉強していない」ものが立て続けに出てくると、あれもこれも「わからない」ということになる。
ところで、アナログの単語カードとAnkiの大きな違いは、分散学習のシステムのために現状を記録されるという点にある。よって、解答がわからなければ「わからない」という記録が残されることになる。別に誰に見られるでもないのだからそこで屈辱を感じる必要などひとつもないのだが、なんだか、テストされているのと同じでなんとなーく嫌な感じがしてくる。
(繰り返すけれども、これはAnkiに挫折しがちな人に向けて書いているものなので、ストレスなど感じたことはないという人はスルーしてほしい。)
システム上の区別でしか無いのだから気にしない、というふうに意識を変えるのも現実的なひとつの手である。Ankiを普通に活用するためには、そうなったほうが早いことは確実だ。
あるいは新規カードの数を減らして、「パッとわからない」の量を予めコントロールするという方法もあるだろう。ただ、それだと当然ながら自分が学習しているカードの総量がなかなか増えていかない。
ふと思ったのは、そもそもの話、「覚えるほど勉強していない」ものをいきなりテスト形式で自分に問うのがまずいのではないか、ということだ。
(こんなことにもすぐ思い至らないからいつまで経ってもポンコツ人間のままなのだが、それはさておき。)
自分で入力したなら、一応一度は見ていてその知識が覚える必要があるものだと自分で感じたからAnkiの中に収められているはずだが、その時にしっかり「よし、覚えるぞ」と意識できていないこともある。Excelを使って大量の問題を機械的に入力していったりすると尚の事である。そうなるとむしろ、Ankiに取り込んだ時点で、一仕事終えた安心からスルッと忘却してしまうことさえある。
その状態でAnkiを起動して学習開始ボタンを押すと、どうしたことでしょう、今さっき打ち込んだ情報なのに全くわからない! という悲劇に見舞われることになる。そんなことにはならないよ、という人はそれでいいんです。そのまま健康に生きてほしい。
で、学習開始ボタンを押すと「わからない」に直面し、学習を進めるには「わからない」を記録されてしまう。なんか嫌だ。面倒くさい。起動したくない。
このダメ人間ルートから抜け出すにはどうしたらいいか? それは至って簡単なことで、Ankiの予習をすればいいのである。
つまり、カードブラウザを開き、デスクトップ版では「期日」、スマホ版では「学習予定日時順」に並べ、これから出てくる問題を一通り先に見る。そして今からこれらを覚えるのだぞと意識をしてから、学習開始ボタンを押す。
そうすると、仮にそれでも覚えられていないとしても、「えっと……なんだろこれ……」というわからなさから、「あっ、あーっ、なんだっけ!」という程度のわからなさに進化する。テンションが全く違うのである。このテンションだと、「もう一度」を押すことになっても二度目には「あーわかるわかるこれでしょ」という気持ちで「普通」を押すことができるのだ。
直前に見たのだから「見たことある」感があるのは当たり前なのだが、勉強というのは結局のところ楽しくやれるかが鍵で、何も修行僧のように一切の甘えを許さずに取り組む必要もない。例えば高校数学の勉強も、解き方がわからない問題は自力で悪戦苦闘していないでさっさと解答例を見て記憶してしまうのが良いと言われているし、とにかく覚えられるようにやればいいのである。
ということで、延々と「もう一度」が続いて苦しいときはカードを一覧して予習してみよう、という話でした。