顔(2024年)を書いた時には思い出さなかったけど、前にも松本清張『顔』のドラマを見たことがあったのだった。
2013年10月3日放送、主演は松雪泰子。殺されるクズ男役は坂口憲二、目撃者役は田中麗奈。
時代設定は原作と同じで昭和22年とその9年後とのこと。でも殺す側殺される側は2024年版同様に原作とは男女が反転している。まあドラマ化のたびに主人公が男だったり女だったりするようだ。
松雪泰子は一体開始時点で何歳の役ということだったのか気になってしまったけど、大女優になった姿はさすがの貫禄だった。あと冒頭の米兵相手の酒場の描写に「戦後」を強く感じて印象的だった。時代を映した雰囲気が強烈に思えたので(そしてちゃんと題名を記憶していなかったので)、今年の『顔』を見て2013年版のことは全然思い起こさなかった。構図としては確かに大体同じ。
ちなみに今年のは「テレビ朝日開局65周年記念」で、2013年の方は「フジテレビ開局55周年記念」だったらしい。
過去の名作を現代版としてアレンジするということには、いつも賛否両論がつきものだと思う。原作の尊重というのも色々な観点がある。例えばクラシック音楽なんかと一緒だ。そして今まさに人々を苦しめている社会問題をダイレクトに反映するとエンタメとしての満足感は減っていくだろう。でも、そんなことは作っている側はきっと百も承知で、それでもテレビでこれをやらねばならないと思ったその心に思いを馳せたいと私は思いました。