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たいせつ

個人的に、ふだん「重要」「肝要」「大事」は使うが「大切」はあまり使わないな、と思って、多分「大切」は「重要」などと比べて主観的なニュアンスがあり、主観的な価値判断を語ろうとするタイミングがあまりないからだろうと考えた。「大事」もどちらかというと主観寄りで、私の中で最大限主観的な語りの中で「大事」までなら使うという位置づけになっている。
誰かの話を読むなどしていても、「大切」という表現だと「その人個人の感想」か「人々の気持ちの問題」という印象がある。「その方が幸せになれる」みたいなニュアンス。「必要性」「重要性」とは違う尺度に思える。

その話はそれで終わりだが、「大切」や「大事」は「たいせつ」「だいじ」と書かれることがある一方で、「重要」「肝要」を「じゅうよう」とか「かんよう」と書いて表現することはないなと気づいた。両者とも音読みの漢語であり、言葉の形式的な属性はその差に影響していない。
「大切」「大事」の方が早くから習う、ということはひとつの理由かもしれない。小学一年生の時点でこれらの言葉は既に理解して使っているだろう。「重要」「肝要」はおそらくまだ結構先だ。
でも大人が大人に向けた語りでもわざわざ「たいせつ」「だいじ」と開いて書くということは、「小さい子どもも使う語彙だから」ということは理由の全てではなさそうだ。
まあ多分、「やまとことば風にしたい」ということなのだろうと思う。ひらがなにすれば柔らかい感じが醸し出されて「ありがたい」などの言葉と調和する。で、それなら大和言葉にしたらいいんじゃないのかと思ったが、大和言葉で「大切」に当たる言葉はなんなのかと考えた時、どうもパッと思い浮かばなかった。
「大切」を辞書で引くと、以下のように書いてあった。(大辞泉)

①もっとも必要であり、重んじられるさま。
②丁寧に扱って、大事にするさま。
③急を要するさま。

「大事」は以下。名詞と形容動詞とあって、形容動詞の方の引用。

①価値あるものとして、大切に扱うさま。
②重要で欠くことのできないさま。ある物事の存否にかかわるさま。

うーん。どちらも代替できる大和言葉がなさそうだ。「大切」と「大事」でループしている。そして「大事」の方には「重要」が登場する。やはり「大事」は「大切」より客観寄りに位置している感がある。大辞泉の「大切」の項にはそれらの使い分けが書かれているが、読んでみるに自分の感覚と一致しているようだ。
類語を調べてみても漢語ばかりが並んでいる。大雑把に言えば近縁な大和言葉はなくもないが、例えば「愛おしい」とか「慈しむ」とかいうのは「大切」と互換性があるとは言えない。

ところで「大切」というのは音読みの熟語だから漢語だが、字面と意味はあまり合っていない。中国風な感じはしないが、どこで発生した言葉だろうか。
調べてみると「大いに迫る」「切迫する」を元にした和製漢語とある。ただし平安時代には既にあったようだから歴史は古い。
大切/たいせつ - 語源由来辞典
当初はむしろ「重要」「肝要」に近いニュアンスだったようだ。「かけがえのない」的な雰囲気ではない。
しかし他の漢語よりは大和言葉に近い感じがするのは言葉の成り立ちからも頷ける。より漢語らしい漢語と並べた時、昔の人は「大切」の方により大和言葉的なニュアンスを持たせて言葉の用法を区別したくなったのかもしれないし、それはそうなるだろうと思った。

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