Scrapboxで自分が扱っていたものはつまり「がらくた箱」なのだ、ということを「賢くなる」と情報ツールの位置関係で見出してから整理を進めてきたわけだが、自分の関心に関わることでもうひとつ考えるべきものに思い当たった。「がらくた箱」に対するものとしての「宝石箱」である。
子どもの時分には、がらくた箱は宝石箱とほぼイコールなので、その差を意識する必要はない。そしてここまでの検討では子どもの頃の感覚をメタファーとして用いたので自分の関心を基準としたノートを「がらくた箱」と表現したが、しかし無秩序に全部突っ込んだ箱がひとつあるだけではちょっと不十分だという感覚がある。
子どもの頃のがらくた箱というのは、その時点で自分の目に輝いて見えたものを収集したもので、まだ関心の幅も大したことがないから必然的に純度が高く範囲が狭いものになる。例えば「情報」はその箱にはほとんど入らない。しかし大人になっていくと、むしろ情報に対して関心を持つ方が多くなるし、関心を抱く領域も広範になって、己の心の赴くままに集めていると量的に収拾がつかなくなる。なので懐の広いEvernoteやScrapboxのようなツールが必要になる*1。
そうやって果てしなく収集していくとその数は何千とか何万とかになってしまうが、それらは等価というわけではない。いずれも自分の気分を良くすることは確かであるにしても、やはりその中でも特別なものというのがある。そして自分の好みはこれなのだ、という感じでそういう特別なものをずらっと並べてみたくなる。で、以前は例えば特別なものをピンするとか、「○○ランキング」「お気に入りの○○」みたいなページを作って列挙するとかいうことで「これが特別」と分かるようにしようとしていた。でもこれはどうも私には有効ではないようだ。「がらくた箱」という言い方を考えつかないでいた間はそのうまくいかなさの正体がよくわかっていなかった。
つまるところ、がらくた箱の中にある以上はがらくたであり、がらくた箱の中で何をどうやってもそれが宝石には見えないのだ。(私の場合は。)
デジタルツール以前はどうしていたのだったかと考えてみたが、Evernoteブームが到来する以前はそもそも自分の関心に焦点を当てることが下手くそだったので、そういうものをうまく扱えていた時期はなかった。今アナログでやるとすれば、特別感漂うシステム手帳か何かにきちんとリストやノートを作るとかするかもしれない*2。
デジタルで「がらくた箱」とは別に「宝石箱」を作るとして、どんなツールを選ぶのが良いか。
以前は「自分はこれらを特別に思っている」ということを忘れないためにリストを作ろうとしていて、Scrapbox内のリストの他にも例えばDynalistやNotionにそういう場を作ったりしたのだが、そういうリストには思ったほどわくわく感が生まれない。熱心に更新したいと思わないし、見返してもそんなに楽しくない。リストではなくそれそのものがそこにある形の方が良い気がする。
また、宝石として扱うようなものは視覚要素が存在するものが多いので、単にタイトルが並ぶようなものではなく画像が目立つ形が良いだろう。その意味ではNotionでも全然問題ない。私個人がNotionを「リスト」として使っていたのがいまいちだっただけで、情報そのものの拠点にするならNotionのギャラリー表示でも構わない。
現状Notionをそんなに重用していないので、自分の中の「気安さ」で考えるとやはりScrapboxが良いような気がする。「がらくた箱」とはきょうだいのような位置づけのものだし、その意味でも同じツールを使う方が納得感がある。一覧のグリッドを大きめにしたり画像が目立つようにしたりすると楽しいだろう。「がらくた箱」は数が大量なのであまりグリッドのサイズは大きくしたくないのだが、「宝石箱」の方はひとつひとつが目立っていた方が良い。
そうだ、今思いついたが、CSSで画像に額縁を付けたりしたらどうか。かなり前にそういう感じのことを考えていたことがあったが(HTML/CSSで自分用の美術館を作る - Noratetsu's Room(のらてつ研究所))、ScrapboxのUserCSSでやるというのは全然思い至らなかった。例えばこんな感じ(スタイルは適当)。
このスタイルが良いかどうかはちょっと置いておくとして、何かしら画像表示に特化したようなデザインを考えるのは「宝石箱」らしさの演出として重要なことに思える。
*1: 置き場所の膨張を気にしないならみうらじゅんのようにスクラップブックを無限に作り続けるのもありだが、みんなができることではない気がするし、場所を取らないデジタルながらくた箱は便利である。そもそも手に入れたものがデジタルデータであることも多いので、いずれにしろデジタルがらくた箱は必須という感がある。
*2: 写真ならアルバムを作ればいいのだが、多分あれは時系列だからすんなり作れるのだろうと思う。アルバムの発想を応用して自分にとっての特別なものを出会った順に記録していくというのもありだが、リアルタイムの記録がなく後から思い出していく必要がある状態なので入れ替え可能なやり方のほうが良さそうだ。
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