情報管理にはScrapboxを使っています。
Scrapboxがどんなサービスかというのは、以下に紹介するnoteと漫画のほか素晴らしい記事がいくつもあるので初耳という方はそちらをご参照いただくことにして、ここではScrapboxに少し触れた人を読者に想定して私なりの考え方について書き留めたいと思います。
今回書きたいのは、ページの種類をどう理解するか、という話です。
まずScrapboxはツールの種類としてはwikiで、更に「タグ」と「ページ」を区別しません。「タグ的な見た目をしたもの」と「個別の記事的な見た目をしたもの」が同じものとして扱われます(言葉で説明すると難解ですが、使ってみればすぐに意味するところがわかると思います)。
つまり、同じ場所に、同じようなサイズ感で、「タグとして用いたいもの」と「個別記事として扱いたいもの」が同居することになります。これはものすごい長所であると同時に、なんともいえない混沌を生み出すことになります。
例えば以下のようなページがあったとします。(ここではハッシュタグを便宜上「♯」と表記しています。)
◯◯乳業パリチョコアイスバナナ味
[2020/04/13]の3時のおやつ
[チョコ]がパリッとしていて美味しかった。
[食感]がポイントかもしれない。
♯◯◯乳業 ♯アイス ♯バナナ味
このとき、「◯◯乳業パリチョコアイスバナナ味」というタイトルの記事があり、その中に「2020/04/13」「チョコ」「食感」へのリンクと、「◯◯乳業」「アイス」「バナナ味」というタグがついている、という状態です。
(リンクとタグ、と書き分けましたが、[]で囲むか♯をつけるかという見た目をその都度選択できるというだけで、機能的には同じことを意味しています。つまり、「[チョコ]」と「♯チョコ」は全く同じ働きをします。ただし、気分的にはその二つの見た目には違いを感じるので敢えて書き分けています。)
そしてそれぞれのワードに対して他のページからもリンクが貼られているとすると、記事本文の下部に関連するページがずらりと並びます。
更に、それぞれのワードについて本文を書いていると、それぞれがページとして形を持ち、トップページにも並ぶことになります。
それぞれに本文をつけてしまった場合、トップページには「◯◯乳業パリチョコアイスバナナ味」「2020/04/13」「アイス」などというタイトルの記事がカードのように並びます。
他に「プロジェクトAの進捗」とか「外山滋比古『思考の整理学』」とか「万物は流転する」とかいうページもあるかもしれません。
つまり、混沌が尋常でないレベルになってしまうのです。
混沌であることが必ずしも悪いというわけでもなく、自分の脳もそのようにカオスであることを踏まえれば、別に気にすることはないのかもしれません。
ただ、個人的にはちょっと気になりすぎて耐えられなかったので、なんとかしたくなりました。
混沌と自由はイコールではなく、私の場合は混沌であることが自由を妨げるので、自由に動ける程度の秩序を作ることが必要だと感じたからです。
ちなみに、個人用に関してはプロジェクトを分けるということはしていません。というか、最初は分けたのですがしばらく運用している間に不都合を感じてやめました。(プロジェクトについてはここでは割愛します。)
適度な秩序を実現するにあたっては、「分類を作る」「階層を作る」「識別のための視覚情報を作る」の三種類の要素をScrapboxの利点を損なわない形で達成することを目指しました。
分類や階層にこだわることはともするとScrapboxの思想と反するものになりかねませんが、自分の思考の動きと一致した概念で紐付けすることや、層のレベルが異なる複数の階層に紐付けすることが自然と実現できる点はScrapboxならではのことだと思います。
この分類や階層というのは、「私は、このページをそういうものとして使う」と決めただけであり、システム上の制約は存在しないというのがポイントです。
具体的なやり方は別の機会に譲って、その前段階としてそもそもScrapboxにおける「ページ」をどう捉えるか、ということを整理していきたいと思います。
私は①個別記事②タグ③キーワードの3種類で認識しています。
①個別記事
言い換えると「意味のある情報」ということです。まずはこれがないと始まりません。
20字だけかもしれませんし10000字あるかもしれませんが、何かしらの文脈によって切り取られたりまとめられたりした情報がまず必要です。(それがなければ管理する必要もないので、情報を管理したい人は必ず管理されるべき情報をいくつも抱えているはずです。)
日記かもしれないし、ソースコードかもしれないし、持ち物のリストかもしれないし、会った人のプロフィールかもしれないし、ありとあらゆる「自分にとって意味のある情報」を指します。
そしてそれらは、自分にとってちょうどいい区切りで切り分けられて個別のページとなります。この切り分ける基準にもまた工夫が必要になってきますが、それはまた別の機会に。
②タグ
各記事には、「だいたいどんなジャンルのことか」がわかるようにタグをつけたほうが良いでしょう。
例えば日付をタグとすれば、その日付に関連したページを全て捕まえることができます。日付単位で俯瞰したいことがある場合には有効です。逆に、その必要が無い人には不要であり、場合によってはノイズになります。
このタグは自分にとって必要なものであって、機械的につけてもあまり意味はありません。「どんなタグがついていればこの記事を見つけ出せるか?」「どんな記事が一緒に出てきてほしいか?」を基準にして、自分の脳にとって有効なワードを選ぶ必要があります。最初はとりあえず有効そうなものを色々つけて、自問自答しながら徐々に最適化していくと良いでしょう。
私の場合、この「タグ」にちょっとした階層を作ります。
さっき示した例をもう一度ご覧ください。
◯◯乳業パリチョコアイスバナナ味
[2020/04/13]の3時のおやつ
[チョコ]がパリッとしていて美味しかった。
[食感]がポイントかもしれない。
♯◯◯乳業 ♯アイス ♯バナナ味
このページには「2020/04/13」「チョコ」「食感」「○○乳業」「アイス」「バナナ味」というリンク及びタグがついています。なので、それらのワードからこの記事を引っ張り出すことができます。
しかしここで、「甘いもののメモを見たいなあ」という、より抽象的な需要が自分の中に生じたとします。全ての甘いもの関連ページに「♯甘いもの」と打ち込んでいくのもひとつの手ですが、なんとなく現実的でない気配が漂っています。
既につけてあるリンクとタグを見ると、これがついていればほぼ確実に甘いものだろうと判断できるワードがあります。「チョコ」と「アイス」です。この例では、自分の中での基準としてチョコ菓子ではなくアイスだという判定がされているという意味で「♯アイス」をタグにしていますが、チョコ菓子に「♯チョコ」というタグをつけるに違いないので、まとめて捕まえます。
この場合、次のようなページをとりあえず作ります。
甘いもの
- ♯チョコ
- ♯アイス
すると、このページの下部に、それぞれのリンク・タグをつけている記事が関連ページとして並びます。
また、適切な分類タグが浮かばないけどとりあえず甘いものだ、という記事には「♯甘いもの」というタグをつけておきます。「甘いもの」というカテゴリの中の「未分類」みたいな感覚です。
「アイス」というタグをつけたページも「甘いもの」というひとつ上位のタグをつけたページも、タグの階層は違いますが「甘いもの」というページの下部に並ぶので一度に捕捉することができます。
先に「層のレベルが異なる複数の階層に紐付けする」と書きましたが、それはおおよそこういう意味合いです。
なお、タグとして扱うものにはあまり本文をつけない方が良いように思います。上位のタグに下位のタグのリストを作るほかは、いたずらにページを増やして快適さを減らすことのないように空ページのままにしています。(本文を一度書いたものを空ページにするにはそのページをDeleteすると空になります。)
③キーワード
情報の紐付けに用いるのは、ジャンルだけではありません。
この概念に関連したものが一緒に出てくれると嬉しい〜!みたいな需要に応えるのが謂わば「キーワード」です。
wikiでは人名や用語などにリンクが貼られ、どんどんジャンプしていけるようになっています。Scrapboxでは、リンクでジャンプできるだけでなく、下部に関連ページとして並ぶのが素晴らしい点です。
先ほどのパリチョコアイスの例では、「食感」というワードをリンクにしてあります。「食感」というカテゴリで記事を探したくなることは多分ないのでタグとして機能することはありませんが(もし食感が研究テーマとかになればいつでもタグ化できます)、「食感」というワードがなんとなく気になるぞと思ってリンクにしておくと、これ以降別の機会に「食感」の話が登場したときに、関連ページを見て「そういえば、パリチョコアイスも食感がキモだと思ったのだった」という情報を再入手することができます。
その機会は他の食べ物のレビューかもしれませんし、『食感と恋』とかいう本を読んだときかもしれません(※架空です)。全然違う種類の機会によって、ひとつのお菓子で得た感想が生きることになるかもしれないのです。
キーワードは必ずしも短い単語とは限りません。自分が「このフレーズがひとかたまりだッ!」と思ったらそれがキーワードです。あちこちで感じるひとつの感想みたいなものもキーワードと言えるかもしれません。
例えば「春眠暁を覚えず」と度々感じてあちこちで書いているとかいう場合はそれが自分にとってのキーワードです。「春」とか「暁」とかいう単語で細切れにする必要はありません。
また、このキーワードに関してもあまり本文は添えないほうが良いかと思います。定義が必要なときなどは書いてもいいと思いますが、個別の記事として有用にならないときは無理してページ化しなくて良いでしょう。
例えば、「春眠暁を覚えず」は孟浩然の「春暁」の中の一文ですが、「春眠暁を覚えず」というタイトルのページに「孟浩然の『春暁』より」と記すよりは、「孟浩然『春暁』」というページを作ってそこに「春眠暁を覚えず」と書いてリンクにした方が情報として価値が高まるかもしれません。
そのあたりの情報の扱いは個々人の脳の働き方次第ですが、何を親ページとするかみたいなことには意識を向けたほうがScrapboxの最適化は早まる気がしています。
以上、ページというものへの私の解釈として①個別記事②タグ③キーワードの3つを挙げました。
しかしながら、これらはScrapboxを使う人間の認識の問題であり、Scrapboxというツールはこれらを区別せずに取り扱います。全てはページであり、あらゆるページが3つの形態のいずれにもなりえます。
また、タグとキーワードはなるべく空ページが良いと感じてはいますが、一方でいつでも本文を添えられるということが大きな利点でもあります。
タグの項で紹介したように「下位タグのリスト」をさっと作ることもできますし、キーワードに関してはその言葉の意味するところを書き添えることもできます。
ページの役目を意識しながら、自由に形態を行き来できるというフットワークの軽さを活かして、直感的に操作できるのがScrapboxの理想だと思っています。
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