新用法としてのoutlineの続き的な話。
例によって軽率にBlueskyに投稿しようとしてしまったのを踏みとどまって記事にした。
便宜上、アウトラインという言葉について以下の表記をする。
- 従来の語義通り(主に概要、骨子)のアウトライン→アウトライン
- アウトライナーで扱う形式→〈アウトライン〉
- それ以外の意味を示す場合→「アウトライン」
突然だが、Microsoft Wordにはアウトライン機能がある。なのでWordをアウトライナーの一種として解釈することも普通に可能である。ただしWordを普通文書にしか使わないという「習慣」によって、Wordが提供している形式・機能というのは、すなわち従来通りのアウトラインを指していることになるだろう。解釈に迷う余地はない。
それより汎用的なソフト(Workflowyなどの所謂アウトライナー)は、よりメタな「文章のアウトラインを含む、アウトライン的な形のもの」を扱えるが、アウトラインという言葉が事物の輪郭を指すとなれば、「アウトライン的な形のもの」が「○○のアウトライン」である場合というのは、まずひとつの考え方として、「○○の形を明らかにする」という「目的」がある場合ということになると思う。
そこで考えなくてはならないのは、「アウトライナーに○○について記述する」という行為が、必ず「○○の形を明らかにする」という目的があってのものだと解釈するか否かである。
もしも、「書くからには形を明らかにしようとしているということになるだろう」と捉えるならば、アウトライナーに書かれたものは実は全て従来通りの意味でのアウトラインになっていると言える。完成度が低ければ「まだアウトラインっぽくない」という状態になっているわけだが、「ぽくない」としてもそれは「完成度が低いアウトライン」であって、つまりアウトラインである。
アウトラインらしいか、らしくないかはグラデーションなので、アウトライナーに記述してはいるがアウトライン度がほぼ0ということもあるが、ではアウトライン度がどこまで高まればアウトラインと呼んでいいのかということは明確にできないだろうし、「まだ程度の低いアウトライン」と言った方がいいだろうと思う。例えばへったくそで何を言っているかわからない文があったとして、読んだ気持ちとしては「こんなのは文じゃない」と思ったとしても、しかしそれでも文と呼ぶには呼んでいいはずである。
一方で、「書くだけでは形を明らかにする目的があるとは言えない」と捉えるならば、書かれているものは必ずしも従来の意味でのアウトラインではないということになる。私はこれまでこの解釈をしてきたので、アウトライナーをアウトライナーと呼ぶことに不満があった。そこで、「アウトライン」という単語に〈アウトライン〉の意味を付与することによる解決を見出した。
では、「意味のある言葉を記述しておきながら、その形を明らかにしようという意図はない」ということは果たしてあり得るのだろうか。
ひとつ混乱を生じさせている要素が、やはり「アウトライン」という言葉の解釈なのだが、文章のアウトラインが便宜上とっている形式というのはアウトラインという言葉と本来イコールではないだろう。習慣的に、アウトラインと言えば文章を書く時に用いる形のものを指してはいるが、手元の辞書には「アウトライン」でも「outline」でも「章立て」のような意味は載っていない。ただし一部の辞書では既にWordのアウトライン機能的なものを指して「章」や「節」の語を用いた記述がなされてはいる。
もしもアウトラインという言葉の原義に沿うとするならば、記述が何かの輪郭、または概略、あるいは骨子を示していればそれはアウトラインと言える。そしてもしも完成度という尺度を組み込むならば、まだアウトラインらしくない記述も「完成度の低いアウトライン」と表現することが可能になる。
そう言ってしまうと結局あらゆる記述がアウトラインになってしまうのではないか、という問題がここで新たに発生する。もちろんそうなってしまってはアウトラインという言葉を使うことが意味をなさなくなってしまうので、あらゆる記述を指してよいとなってはいけない。
では、アウトラインと言っていい最低ラインはどこなのか?
このことについて誰しも納得するものを定めることは不可能だろう。ここでは私という一個人の感性の話しかできない。
それでも敢えて言ってみると、つまるところ「ひとつの記述にひとつの区切られた領域が与えられた形式で書かれていること」だと私は感じている。箇条書きのバレットは「この行はこの記述のための領域である」ということを示しているし、所謂章立ては各文字列に章とか節とかの領域があるわけである。それらが構造に従ってインデントされていたり見た目を変えていたりするかどうかはこの際関係ない。そうなっていれば「アウトラインの完成度」が高まるが、アウトラインとしての最低ラインはそこにはないということである。
そして区切られた領域があるということは、既にその記述に輪郭つまり「アウトライン」があるということである。
そこでアウトライナーである。アウトライナーというのは〈アウトライン〉を扱えるアプリケーションということになるが、その本質は各記述が区切られていることにあると思う。このことによって、記述単位で自由に動かすことが可能になり、適切に編集された記述の集合体によって更に何かの形を明らかにするということが可能になる。
つまり、アウトライナーに書いた時点で、あらゆる記述が輪郭を持つ。そしてそれは「完成度0以上のアウトライン」になれたことを意味する。その「輪郭がある感じ」こそを求めて私はアウトライナーを使っているのである。それが要らないならアウトライナーをわざわざ使うことはない。
(ただし当然ながら、アウトライナーという名前が指すところの「アウトライン」は個別の記述の輪郭という意味ではないというのは強調しておく必要があるだろう。)
上の方で、「意味のある言葉を記述しておきながら、その形を明らかにしようという意図はない」ということはあり得るかという問いを立てた。このことについて二つのことが言えると思う。
まず、或る記述によって「その記述そのものではない何かの形」を明らかにするという意図についてである。これはやはり「特にない」という可能性が十分にあると思う。アウトライナーに書いたからといって、常に何かの事物や概念、自分の主義主張などを明らかにするとは限らない。その意味では、何かの記述が「○○のアウトライン」の一部になっていないことが普通にある。なので、アウトライナーを「○○のアウトライン」を扱うものと捉えるとすれば、名称にそのまま納得はできなくなり〈アウトライン〉という発想が必要になる。
次に、或る記述自体に明確に形を持たせる意図があるかどうかである。これは自分が使う道具としてアウトライナーを選択している時点で、その意図があると言っていいだろう。〈アウトライン〉は全ての記述が個別の領域、つまり輪郭を持てるのであり、まさにそのことによって私はアウトライナーを選択している。そしてそれ以上の意図が何もなくとも、記述は全て「完成度0以上のアウトライン」になる。ということは、もしもアウトライナーという語を(デイブ・ワイナーの意図やアウトライナーの歴史を不敬にもすっかり無視してしまって)「記述に輪郭を持たせるもの」と解釈したならば、実は何も違和感がなくなってしまう。
アウトラインという言葉の抽象性から、その解釈を広げることはこのくらい柔軟に可能である。一方でアウトライナーという言葉には命名者が存在し、命名の意図がある。なのでアウトラインという語の解釈を変えることによってアウトライナーという言葉が指す意味を変更することを自由にやっていいかというと、私には首を縦には振れない。
ただ、自分の納得いかなさをどうにかするということだけで言えば、前回書いたように形式的に〈アウトライン〉という概念を作り出すほかにも、アウトラインという言葉の意味を少し広く取ることによって語義に沿いつつ納得を得る道があることを今回発見した。私にとってはそれで十分意味のある思索となった。
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