毎年セスジスズメの幼虫を飼育している。スズメガ科、つまり蛾の仲間の昆虫だ。

もりもり食べてどんどこ大きくなるので見ていて楽しい。4mmくらいから最終的に90mm近くになる。成長速度は時期か気温かでいくらか幅があり、10日くらいで大きくなったのもいれば三週間以上かかったのもいる。

ある程度のサイズになると、おててで葉っぱを挟んで自分の方にぐいと引っ張って食べるのが虫っぽくなくて愉快。一般に虫が葉っぱを食べると虫食いになってなんとなく嫌な感じをもたらしがちだが、セスジスズメは茎だけ残してすっかり食べてしまうので食い痕はもはや気にならない。(ものすごい勢いなので食べられちゃ困るものにこれが来たら阿鼻叫喚であろう。)

あと色合いがシックで質感はベルベットのような高級感があるのでおしゃれ。撫でるとすべすべ。終齢はヘビのような柄になるが、鱗風の模様はよくできている。眼状紋のグラデーションは色味が美しい。

尻尾(尾角)をワイパーのようにぴこぴこ振って歩くのもかわいい。スズメガ類に共通のこの尾角というものは役割がまだわかっていないようだ。多くはバラのトゲのように三角っぽい形をしているが、セスジスズメは細い棒状で、しかも先が真っ白で振ると目立つ。まるでサイリウムのようだ。

腹の吸盤(腹脚)は意外に強力で、手を歩かせるとぴったり張り付く。剥がそうと思うと大変なので(胴体を強く引っ張ると傷めそうで怖い)、棒などを差し出して自分の脚で移ってくれるのを待つことになる。ちなみにひんやりしている。体温がほぼないからそれはそう。

 

子供の頃から昆虫は好きな方だったが、興味の対象はもっぱら甲虫類で、蛾の仲間にはあまり関心を持たなかった。セスジスズメを知ったのは大人になってからで、幼虫は愛嬌があるし成虫も洗練された格好良いデザインをしている。セスジスズメのおかげで蛾にもいくらか関心を向けるようになった。