以前は蛾にはあまり興味がなかったが、この頃は蛾もいいなと思っている。というのは前にも書いたかもしれない。(ただしアメリカシロヒトリは駄目です。)
そもそも蝶にもそれほど興味がなかったし甲虫専門みたいなところはあったのだが、余計に蛾に興味がなかったのは、持っている大きな昆虫図鑑で蛾が全く扱われていなかったからのように思う。
昆虫図鑑は二種類持っていて(親が買ってくれて)、ひとつはかなりの種類が写真とともに紹介されている大きな図鑑で、もうひとつは絵で描かれた『コンパクト版原色昆虫図鑑』だ。どちらも2巻セットである。大きい方は普段見かける大抵の昆虫が載っている(たまに載っていないこともある)し、卵や幼虫の写真なども当時の図鑑としては豊富なので、何か調べるとなったらこちらを見る。もちろん文による記述もきちんとしている。
しかしこっちに蛾がさっぱり載っていないのである。一種も載っていない。オオミズアオもヨナグニサンもない。蝶はたくさん載っている。蛾が省略されていることについての断り書きは見当たらなかったが、別に主観的に不快な虫だから載せないという判断ではないだろう。他の種類の昆虫はいわゆる不快害虫でも大抵載っている。単純に、蝶に比べて種の数が膨大なうえ似た姿も多くて扱いにくいのだと思う。
『コンパクト版原色昆虫図鑑』の方にはきちんと載っているが、しかしこちらは掲載している数が少なく、蛾を調べても載っている率が低い。蛾は日常的に出会う機会が多いのにその種の多さゆえに「なんだかよくわからない」の状態がなかなか解消されない。あと幼虫を見かけることが多いわけだが原色昆虫図鑑に幼虫は載っていない。
また、原色昆虫図鑑は正確で美しい絵ではあるが可愛くはない。他にも博物画の辞典や、『昆虫記』などの写真集はいくつかあるが、どれを見てもまあ「蛾っていいよね!」という気持ちが惹起されるわけではない。特段悪者にされているわけではなくとも、魅力はいまいち感じにくい。
私が「蛾もいいね」と思い始めたのはオオスカシバとセスジスズメがきっかけだが、割と最近「なんて美しいんだ」と感じる出会いがあった。ツゲノメイガという蛾である。(続く)
関連: セスジスズメ