先日の「ダーウィンが来た!」でシロイワヤギのことをやっていた。
シロイワヤギのことをTak.さんが昔に書いていらっしゃったような、と思って探しに行こうとしたら、ブログサービス自体が今年の3月末で終了してしまっていた。今書きながらかなりのショックの中にある。まだ全部読めていなかった。
さてシロイワヤギだが(未だ「ガーン」という擬音の前にいる)、ロッキー山脈のものすごい断崖で暮らしているかなり大きなヤギである。ヤギと言って思い浮かべる姿よりはカモシカなんかに近いだろう。加えて真っ白でもふもふしている。ゆえに別名はシロカモシカ。
あるいはターキンと似ている。実際、ターキンとは系統図上かなり近そうである。
生態について紹介されていたが、やはり断崖絶壁の暮らしは過酷そうだ。赤ちゃんが生まれると、天敵から守るためにますます崖の上へ上へと登っていく。子どもがついて来れていないことに気づかずひたすら草を食んでいる母親にはちょっと笑ってしまったが、子どもにはなかなか厳しい生活だと思った。
あとは特定の岩に含まれるミネラルを求めて川を泳いで渡ることもあるというのに驚いた。そして例によって険しいその岩場を登り、時に僅かな足場から離れた岩に脚を伸ばしてものすごく頑張って岩のミネラルを舐める。その姿は少しコミカルに思えたが、あまりに頑張っている感じで転落しないかハラハラした。勢いをつけて前方の岩壁に前脚をかけるはいいが、その脚をどうやって戻すのかと思った。
夏に暑さを避けるために集まった残雪の上で、成長した子どもと思われるシロイワヤギたちがやたらと飛び跳ねているのが可笑しかった。遊んでいるらしい。やはり飛び跳ねるのは遊びとして大事なのだろう。人間もスポーツなどの言い訳を使わずともただ飛び跳ねていいと思う。
そのように面白みを感じるところもあるが、しかしシロイワヤギの立ち姿を見ればむしろ神々しさを覚える。
鋭く切り立った岩山の頂点に立ち下を遥かに見据える、という姿勢がその印象をもたらしているということはもちろんあるだろう。しかしそれだけではない。
シロイワヤギの姿というのは見れば見るほど不思議なバランスに思える。巨体を覆う純白の長毛は全体に柔らかな印象をもたらすが、その毛の届かない膝下は細く且つ強靭である。そして程よい長さの鋭い角は装飾的というより実戦的で(実際、クマを返り討ちにしてしまうこともあるようだ)、細長い顔はどちらかというとウマに似て顎は幾分頑丈そうに見える。ヤギと名のつくに相応しい顎髭は豊かで貫禄がある。柔剛併せ持ち、一言で印象を表現するのは難しい。
顔つきを見れば、喋りだしそうという印象があるわけではないが、黒い目の奥には深い知性を感じる。軽率さとは無縁のようだ。しかし狡猾な雰囲気はない。人間に例えるなら仙人的な存在感である。
かわいいとかかっこいいとか綺麗とか強そうとか、そのような単純な形容詞では感想を述べ難い動物だ。しかし本来いかなる生物も簡単には言い表せないはずである。シロイワヤギを見ているとそのことを思い出させてくれるような感じがする。