後半も後半の一部しか見ていないのだけど、なかなか見応えのある傑作だなと思った。まずこの時代の話をこの密度で一年間やれたのがもうすごいことなのだろう。

最終回手前の回で公任と道長がぶつかり倫子がまひろに秘密を突きつけたが、「鎌倉殿の13人」でも最終盤にこの感じの「主人公の不義理が責められる」展開があった。普段大河ドラマを見ないからそういう展開がどれほど一般的かわからないけれど、主人公だからといって人間関係上の至らなさがスルーされないというのは見ていて面白い。

道長は大局的に正しいことを言っているが、公任たちからすれば誰のお陰でお前がその地位にいられたと思っているんだという思いも多少あろうし、まひろ一筋すぎて他の人間への心配りがちょっと欠けているせいで盟友の公任たちに余計な恥をかかせたという雰囲気が漂っているのが秀逸。史実では各々にどういう機微があったのかわからないけれど、ドラマとして見事にできている。さすがだなと思う。

 

で、最終回。(ネタバレを含むので折りたたみ)

月並みだけど人が死んでいく様子を見ると悲しくなるなあ…。柄本佑の演技が本当に見事だった。

いくつもの死や身近な人間の認知症といった悲しみもあり、一方で交わされてほしい会話が各所で交わされ、そして次の世代の活躍と時代の変化の予兆も描かれ、色々に思いを馳せたくなる最終回だった。あらゆるシーンが良かった。

あとまあなんといっても倫子様。思ってたんと違った感じの圧倒的に強いエピソードを打ち明けられてプライドがぼろぼろに…。そんな中で真っ先に娘彰子を思い、権力者の妻として家を守る覚悟を決め込み、最後まで殿を想ってまひろに頭まで下げる。黒木華の纏う雰囲気と演技力が輝いていた。

ロバート秋山も本当に良かったなあ。もう完全に藤原実資にしか見えない。藤原実資役のロバート秋山ではなく、あれこそが藤原実資その人ですという感じ。そのくらいの好演だった。

ラスト、騎馬武者たちが後ろから追い抜いていき、道長が守り抜いた泰平の世が道長の死とともに終わりを迎えようとしているのを、都を出たまひろだけが感じ取ったという描写がとても良かった。ロマンスが核にあるドラマではあったんだろうけど、最後は非常に大河ドラマらしかった。平清盛や鎌倉殿の13人を自然と想起する。

見たのはドラマ全体からするとごく一部だけど、良いドラマであったことを滑り込みで知れてよかった。

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