NHKのEテレでアニメが放送されている。現在のシリーズは日本では2022年からのようだ。
昔の実写版とは違って、今のアニメ版は嫌な人、嫌な態度というのが全然出てこない。いわゆる「やさしいせかい」になっている。トップハム・ハット卿は機関車たちを心から大事にしているし、ゴードンもトーマスにいじわるを言ったりしない。パーシーは出てくるたびにトーマスに親しみを表現するし、みんな信頼し合う友だちだ。メインメンバー以外ではちょっとした文句を言ってくるキャラも出てこなくはないが、そのキャラなりの信条があってのことで、不快な感じはしない。
基本的には教育番組らしいオーソドックスな展開で、加えて毎回歌のシーンがあってその部分はちょっとミュージカル調になっている。そして使われている色味は優しく明るいもので、全体的に能天気で牧歌的な空気である。
で、如何にも子ども向けのアニメではあるのだが、見ていると時折身につまされることがあって侮れない。毎回何かしらのトラブルが起きてはそれをみんなで協力して解決することになるというThe教育番組だが、さすがに今の時代になるとなかなか巧みにできている。
嫌なやつは一人も出てこないのに毎度トラブルが起きるのはつまるところ「きちんと人の話を聞かない」「曖昧に指示する」「うっかりする」「甘く見て油断する」という「社会人あるある」である。誰も馬鹿ではないし愚かでもないし悪いやつでもないのに問題は起こる。それが私には逆にリアルに感じられる。
顔がついていて喋ったり歩いたり手っぽいパーツを伸ばしたりする機関車はどう見てもファンタジーなのだが、彼ら彼女らは「仕事をしている」存在なので、展開を追っているとところどころちょっと胃が痛くなってくる感じがある。自分自身の失敗も呼び起こされるし、こういうことの積み重ねであの会社はあんな不祥事を引き起こしたんだろうなとかそういうことを考えてしまう。
毎度人の話を聞かずに失敗する機関車たちに、子どもは「また同じことやってるー!ばかだー!」と思って笑ったりするかもしれないが、大人はこのアニメが如何に教育的かを人生経験からしみじみ感じ入ってしまうだろう。
トーマスたちは必ずリカバリーできるし、失敗した子が厳しく怒られることはなく(代わりに自分で気づいて自分で深く反省する)、それは現実にはない優しさだろう。実社会もこうだったらいいのになという思いを抱きつつ、笑って楽しめるよくできたアニメである。